訪問看護師に必要な知識やスキル
2025/04/04
はじめに
訪問看護は、病院とは異なる環境で利用者様を支える専門的な看護分野です。自宅や施設でのケアを提供する訪問看護師には、幅広い知識とスキルが求められるのは勿論ですが、まずは人として利用者さんの信頼を得ることが大切です。利用者様宅に迎え入れてもらうためには、信頼がおける人と認識してもらう必要があります。『しっかり挨拶』『お話を傾聴』『時間を守る』といった人として当たり前の小さな積み重ねが利用者様の信頼に繋がっていきます。 本コラムでは、訪問看護師として必要な知識や技術、そして現場で役立つポイントを解説します。これから訪問看護を始める方や、すでに従事している方の参考になれば幸いです。
訪問看護の基本的な役割
訪問看護師の主な役割は、利用者様の自宅での生活を支えることです。具体的には以下のような業務を担います。
・健康状態の観察(バイタルサイン測定、症状のチェック)
・医療処置(点滴、褥瘡ケア、カテーテル管理など)
・服薬管理(薬のセット、飲み忘れ防止の支援)
・リハビリテーション支援(身体機能の維持・向上)
・精神的サポート(利用者様や家族の不安を軽減)
・緊急時対応(急変時の適切な判断と対応)
・家族支援(介護負担の軽減、相談対応)
訪問看護では「チーム医療」の一員として、医師やリハビリスタッフ、ケアマネジャーと連携しながらケアを提供します。
訪問看護師に求められる知識 ①疾患管理の知識
訪問看護は病院とは異なり、限られた設備の中で適切な判断を求められます。そのため、以下の知識が特に重要です。訪問看護で対応することが多い疾患について理解しておくことが大切です。
・慢性疾患(糖尿病、高血圧、心不全、慢性呼吸器疾患など)
・認知症・精神疾患(アルツハイマー型認知症、うつ病など)
・がんや終末期ケア(疼痛管理、ターミナルケア)
・感染症管理(在宅での感染対策、予防措置)
訪問看護師に求められる知識 ②医療処置のスキル
訪問看護では、限られた環境で適切な処置を行う能力が必要です。
・褥瘡(床ずれ)ケア
・カテーテル管理(尿・胃瘻など)
・吸引.人工呼吸器管理
・在宅酸素療法(HOT)
・点滴・注射
訪問看護師に求められる知識 ③コミュニケーション力
訪問看護では、利用者様やそのご家族と深く関わるため、円滑なコミュニケーションが欠かせません。
*傾聴し受け止める力
利用者様やご家族に寄り添い思いを傾聴し、対応できない内容だとその場で分かっても、一度受け止めることで事業所に持ち帰ったり調整したりすることで、ご利用者様も「この人はちゃんと話を聞いてくれる」「私のことを考えてくれる人」という印象になり、「この人が頑張ってくれて無理だったなら仕方ない」という気持ちになりやすいです。
*説明力
専門用語をかみ砕いて利用者様に分かりやすく伝えられる事が大切です。どんなに大事なことでも、利用者様が理解し行動に移そうと思えなければ意味がありません。
*対話力
毎回の訪問は一人だとしても、事業所のスタッフみんなで情報を共有し、利用者様にとって良い方法を導くために、他者の意見を聞き一緒に話し合いができるスキルが必要です。
*他職種連携(医師や介護職との情報共有)
利用者様やご家族を含めた関係機関と密にコミュニケーションをとり、些細な変化でも共有し話し合うことで、共通した認識をもって同じ方向へ進むことが大切です。
在宅医療では、治療はもちろんですが、ご利用者様の生活を一番に考える必要があります。
ご自宅で安全に、そして希望に最大限沿ったサービスを提供することが訪問看護には求められています。
訪問看護の現場で役立つスキル ①判断力と対応力
訪問看護では「その場で判断する力」が求められます。
・体調の急変時に、適切な対応ができるか
・医師へ報告する際、何を優先して伝えるべきか
・家族が不安を感じているときに、どのようにサポートできるか
訪問看護の現場で役立つスキル ②柔軟な対応力
病院と違い、訪問先ごとに環境が異なります。そのため、臨機応変に対応できるスキルが必要です。
・利用者様の生活リズムに合わせたケア
・急な変更や家族の要望への対応
・介護者への指導や助言
訪問看護の現場で役立つスキル ③記録のスキル
訪問看護では、適切な記録を残すことが重要です。5W1Hをしっかりと明記し情報をまとめ、簡潔に書き出すスキルが訪問看護師には必要です。
・SOAP(主観的情報、客観的情報、評価、計画)を意識した記録
・医師やケアマネジャーとの情報共有がスムーズにできる記録方法
・リスク管理のための適切な文書作成
訪問看護の現場で役立つスキル ④制度の知識
年齢や疾患によって介護保険が優先なのか医療保険が優先なのかなど、使用できる保険も変わってきます。利用者様が使える制度や支援も異なってくるため、 まずは保険制度の基礎を知り、使用する保険がどのような場合に変わるのかなどを理解する必要があります。
訪問看護師のやりがいと課題
訪問看護には、大きなやりがいがあります。
・利用者様の生活を支える実感が持てる
・一人ひとりに寄り添った看護ができる
・長期的な関係性を築ける
一方で、訪問看護ならではの課題もあります。
・1人で訪問するため、緊急時の判断が求められる
・移動が多く、体力的な負担がある
・病院よりもマニュアル化されていないため、自分で考えて行動する力が必要
しかし、これらの課題を乗り越えることで、訪問看護師としての成長を実感できます。
訪問看護師には、幅広い知識とスキルが求められますが、その分やりがいも大きい仕事です。病院とは異なる環境で、利用者様の生活を支えるために、適切な判断力や柔軟な対応力を身につけることが重要です。 これから訪問看護を始める方や、すでに従事している方も、日々の経験を積みながら成長していくことができます。訪問看護の魅力を感じながら、利用者様のより良い生活を私たちと一緒に支えていきましょう!