訪問看護における栄養管理の重要性
2025/04/07
栄養は健康維持に欠かせない要素であり、特に高齢者や在宅療養中の方にとっては、適切な栄養管理が生活の質(QOL)を大きく左右します。訪問看護では、医療的なケアだけでなく、栄養状態の管理も重要な役割の一つです。本コラムでは、訪問看護における栄養管理の重要性と具体的な支援方法について解説します。
なぜ栄養管理が重要なのか?
在宅療養を行う方の多くは、病気や高齢による食欲低下、消化機能の低下、嚥下(えんげ)障害などの問題を抱えています。適切な栄養が摂れないと、以下のような影響が出る可能性があります。
・免疫力の低下 → 感染症にかかりやすくなる
・筋力の低下 → 寝たきりのリスクが高まる
・傷の治りが遅くなる → 褥瘡(床ずれ)の悪化
・意欲や認知機能の低下 → 生活の質(QOL)が低下
栄養不足は全身の健康に影響を及ぼすため、訪問看護では食事や栄養管理を重視する必要があります。
訪問看護での栄養管理の役割 ①栄養状態の評価
訪問看護では、利用者様の栄養状態を定期的にチェックすることが重要です。以下のポイントを確認します。 ・体重の変化(急激な減少がないか)
・食事摂取量(1日どれくらい食べているか)
・食欲の有無(食欲不振が続いていないか)
・筋力低下の兆候(握力の低下や歩行の困難さ)
・血液検査データ(アルブミン値、ヘモグロビン値など)
これらの情報をもとに、利用者様に適した栄養管理の方法を検討します。
訪問看護での栄養管理の役割 ②食事内容のアドバイス
利用者様の状態に応じて、食事の内容を見直すことが大切です。
・エネルギーが不足している場合 → 高カロリーの食品(油、ナッツ、チーズなど)を取り入れる
・たんぱく質不足の場合 → 肉、魚、豆類、卵をバランスよく摂る
・水分不足の場合 → スープやゼリーなどで補う
・食欲がない場合 → 少量でも栄養価の高い食品を選ぶ
訪問看護師は、利用者様の好みや生活スタイルに合わせた栄養の工夫を提案します。
訪問看護での栄養管理の役割 ③嚥下障害への対応
嚥下機能が低下している方には、誤嚥(ごえん)を防ぐために適切な食事形態を選ぶ必要があります。
・刻み食やペースト食の活用 → 噛む力が弱い方に適している
・とろみをつけた飲み物 → 誤嚥を防ぐための工夫
・嚥下体操の指導 → 食事前に行うことで飲み込みをスムーズにする
言語聴覚士(ST)や管理栄養士と連携し、利用者様に適した食事を提供することが重要です。
栄養補助食品の活用
食事だけでは栄養が不足する場合、栄養補助食品を取り入れることが有効です。
・高カロリー栄養ドリンク(エネルギー不足の方に)
・プロテインやたんぱく質補助食品(筋力低下の予防)
・ビタミン・ミネラル補助食品(バランスのとれた栄養摂取)
訪問看護師が適切な補助食品を提案し、必要に応じて医師や管理栄養士と相談しながら導入を進めます。
ご家族へのサポートと指導
在宅での栄養管理は、ご家族の協力が欠かせません。訪問看護では、ご家族が無理なく栄養管理を続けられるよう、以下のような支援を行います。
・食事の工夫をアドバイス(簡単に作れる栄養バランスの良いメニュー)
・調理が難しい場合のサポート(宅配食や介護食の活用)
・食事介助の方法を指導(無理なく安全に食事を取れる方法)
特に高齢のご家族が介護を担っている場合、簡単で負担の少ない方法を提案することが重要です。
*鍋一つでできる簡単鍋*
『重ね煮』をご存じでしょうか。高齢者の食事や嚥下機能が低下している方 、アトピーやアレルギー体質の方のためにもとても優しい調理法です。その理由は・・・
・消化しやすく、腸内環境を整える
・抗炎症効果のある食材を活用できる
・身体を温め、免疫力を整える
・添加物や化学調味料を使わない
・野菜の持つエネルギーを引き出す
陰性(体を冷やす性質)の野菜(例:玉ねぎ、にんじん)
ポジティブ(体を温める性質)の野菜(例:ごぼう、しいたけ )
・水を加えずに蒸し煮する
野菜を持つ水分だけで煮るため、素材の味が決められます。
・調味料がちょっと
素材のや愛しい味が引き出され、塩や味噌などの調味料が少なくても美味しく仕上がります
・アレンジが自由自在
重ね煮のベースを作る
●重ね煮の基本的な作り方
①.鍋の底に陽性の野菜(硬くて根に近いもの)を敷く
②中間に中庸の野菜( 一番上に陰性の野菜(柔らかく、水分が多いもの)を重ねる
③塩を少々振り、水を加えずに弱火でじっくり加熱する
④野菜がしんなりしてきたら完成!
訪問看護における栄養管理は、利用者様の健康維持や生活の質の向上に大きく貢献します。食事の工夫や栄養補助食品の活用、嚥下障害への対応など、多方面からサポートすることが求められます。 当訪問看護ステーションでは、利用者様一人ひとりに合った栄養管理を行い、ご家族とともに健康的な生活を支援しています。栄養に関するお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。