“この薬、何に効くの?”に答えられますか?~訪問看護×服薬支援のすすめ~
2025/05/23
在宅療養をしている方のご自宅に伺うと、こんなことがよくあります。
「お薬、多すぎてよくわからないんです」
「これはいつ飲むんだっけ?」
「朝と夕、どっちに飲むのか忘れちゃった…」
「そもそも、これって何の薬でしたっけ?」
日々の生活のなかで、服薬は「当たり前」のようでいて、実はとても複雑で難しいものです。
今回は、訪問看護がどのように「服薬支援」を行っているのか、ご本人やご家族のよくある疑問を交えながら、在宅での服薬を安心して続けていくための工夫をご紹介します。
服薬支援とは?
「薬をきちんと飲んでいるかどうかを確認すること」たしかにそれも大切ですが、訪問看護が行う服薬支援はそれだけではありません。
・薬の内容をわかりやすく説明する
・飲み忘れが起きにくい環境を整える
・副作用や体調の変化を早期にキャッチする
・医師や薬剤師に情報を伝えて処方見直しを提案する
つまり、薬を“単に飲む”から、“安心して飲み続けられる”までを支えることが、訪問看護における服薬支援なのです。
よくある困りごとと訪問看護の支援
【1】薬の量が多くて覚えられない
ご高齢の方や持病が多い方は、1日10種類以上のお薬を飲んでいることも珍しくありません。一見同じように見える錠剤やカプセルが並ぶ中で、
「これって、何の薬だっけ?」となってしまうのは、むしろ自然なことです。「これは血圧の薬?それとも胃薬?」「全部飲んだか不安…」という声をよくお聞きします。
訪問看護では、
・それぞれの薬の役割をわかりやすく説明
・薬のシートに名前.時間帯を書き込む
・お薬カレンダーへのセット
・「朝・昼・夕・寝る前」の区分けを見直す
といった工夫で、“薬の見える化”を行います。
【2】飲み間違いや重複が起きてしまう
・定期薬と頓服(とんぷく:必要時に飲む薬)を間違えて飲んでしまう
・デイサービス用と自宅用で同じ薬を2回飲んでしまった
・ご家族が管理していたが旅行で不在になり混乱…
こんなときも、訪問看護が定期的に確認・整理し、飲み残しや重複のリスクを下げるお手伝いをします。
【3】副作用や体調変化に気づきにくい
「最近フラフラする」「足がむくんでいる」
それ、もしかしたら薬の影響かもしれません。
訪問看護師は、日々のバイタルや症状を観察し、薬の副作用が疑われる場合は主治医や訪問薬剤師に報告・相談します。
例えば、
・利尿剤で脱水傾向に
・降圧剤で血圧が下がりすぎる
・睡眠薬でふらつきや転倒のリスク増加
など、生活に影響する小さな“サイン”に目を向けるのも、看護師の役割です。
訪問薬剤師との連携も大切に
訪問看護ステーションでは、訪問薬剤師と連携するケースも増えています。
薬剤師は薬の専門家として、薬の種類や相互作用、用法の見直し、飲みにくさへの工夫提案(粉薬、シロップへの変更)などを行ってくれます。
訪問看護師は、ご本人の生活リズムや症状の変化、服薬状況を把握している立場として、薬剤師との情報交換の橋渡し役にもなります。
・「薬が多すぎて管理できない」
・「飲みづらい錠剤を粉にできないか」
・「夕食後に飲む薬がいつも飲み忘れてしまう」
こういった相談を薬剤師に共有し、生活に合った形へ調整できるよう支援しています。
ご家族の不安にも寄り添います
ご家族が服薬管理を担っているケースも多く、「自分がミスしないか不安」「いない間が心配」といった声も聞かれます。
お薬の管理には、目に見えないプレッシャーがついて回ります。
でも、訪問看護はご家族のその“がんばり”を支えるためにもあるのです。
・一緒に薬の整理をする
・お薬カレンダーの見方やセット方法を共有
・ご家族が不在のときの対応を一緒に考える
・気になることを主治医に伝えるサポート
など、“服薬を支える家族を支える”関わりも大切にしています。
訪問看護ステーションでできること
地域のかかりつけ医・訪問薬剤師・ケアマネジャーと連携しながら、在宅での服薬支援に力を入れている訪問看護ステーションが数多くあります。
当ステーションでも、医師の指示に基づきながら、
・薬の内容と目的の確認
・飲み方の指導
・服薬状況の記録と評価
・副作用の早期発見
・家族や薬剤師との情報共有
を行い、ご本人が安心して薬を使い続けられる環境づくりを支援しています。
飲み忘れ・飲み間違いを防ぐために
飲み忘れや飲み間違いは、決して特別なことではありません。
特に在宅療養では、日々の変化に合わせて臨機応変に対応する必要があるため、なおさら難しく感じる場面もあります。
訪問看護師は、以下のような工夫で支援しています。
・お薬カレンダーやケースへのセットの仕方を一緒に確認
・「朝・昼・夕・寝る前」の区別がわかりやすくなるようラベルを工夫
・飲み忘れがあったときの対応方法をご家族と共有
・予定変更(通院やデイサービス)に応じた対応もサポート
「これで合ってるかな?」と迷ったとき、
そばに確認できる人がいるだけで、安心感が違います。
「薬を飲みたがらない」とき、どうする?
ご本人が「もう飲みたくない」と言ったとき、ご家族はとても悩まれることと思います。
無理に飲ませると嫌がられるし、飲まないままだと心配…。
そんなときは、まず「なぜ飲みたくないのか」を一緒に探っていきましょう。
・錠剤が大きくて飲みづらい
・回数が多すぎて疲れる
・効果を実感できず、意味を感じられない
・「治らないから」とあきらめてしまっている
訪問看護師は、ご本人の小さなサインを丁寧に読み取りながら、「どうすれば無理なく続けられるか」を一緒に考えていきます。場合によっては医師と相談し、薬の種類を減らしたり、回数を減らしたりする調整も可能です。
お薬は、身体を守ってくれる大切な道具です。でも、量が増えすぎたり、使い方が難しかったりすると、不安や負担になってしまうこともあります。
「この薬、何に効くの?」
そんな疑問を大切にするところから、服薬支援は始まります。
薬は“効けばよい”のではなく、“暮らしの中で安心して使える”ことが大切です。
訪問看護師は、薬と人をつなぐ存在として、ご本人にもご家族にも寄り添いながら、日々の療養生活を支えています。
薬のことで不安があるとき、迷うときは、どうぞ遠慮なくお声かけください。
一緒に、無理なく続けられるお薬との付き合い方を考えていきましょう。


