〜訪問看護の視点で学ぶセルフチェック・ご家族の工夫・プロの支援〜
2025/09/26
糖尿病と足トラブルの切っても切れない関係
糖尿病をお持ちの利用者様の中で、
「足の小さな傷から大きなトラブルに発展してしまった」
というケースは珍しくありません。
訪問看護の現場では、
「気づかないうちにできた靴ずれが潰瘍になっていた」
「乾燥によるひび割れから感染してしまった」
といった事例に出会うことがあります。
なぜ糖尿病と「足」にはこれほど深い関わりがあるのでしょうか。
そして、利用者様・ご家族・訪問看護師が
どのように協力して足を守ればよいのでしょうか。
今回は、セルフチェックの方法からプロのフットケア、
季節ごとの注意点や実際のケースまでを総合的に解説します。
1. 糖尿病と足に起こる変化
●神経障害:感覚が鈍くなる
糖尿病が長く続くと「末梢神経障害」により、足の感覚が低下します。
そのため、
靴ずれや小さな傷があっても痛みを感じにくく、気づくのが遅れてしまいます。
熱いお湯で火傷をしても分からない方も少なくありません。
●血流障害:傷が治りにくい
高血糖状態が続くことで血管がもろくなり、血流が悪化します。
その結果、足の先まで酸素や栄養が届きにくく、傷ができても治りにくい状態に。
これが潰瘍や壊疽へとつながる大きな要因です。
●皮膚の乾燥・変形
糖尿病によって汗や皮脂の分泌が減り、足の皮膚は乾燥しやすくなります。
ひび割れやタコができやすく、そこから細菌が侵入しやすい状態に。
足の変形(外反母趾や偏平足など)がある場合は、
局所に負担がかかりトラブルを悪化させます。
2. 利用者様ができるセルフチェック
毎日の観察は「最大の予防」です。
鏡を使ったり、ご家族に見てもらうのもおすすめです。
●チェックリスト
・傷や赤み、腫れはないか
・爪の伸びすぎや変色はないか
・かかとや足裏にひび割れはないか
・足の温度や色に左右差がないか
・異臭や膿のような分泌がないか
・感覚が鈍っていないか
「お風呂上がりにサッと確認」
「靴下を履き替えるときにチェック」など、習慣にすると続けやすいです。
3. ご家族ができる日常のケア
●足を清潔にする
・ぬるま湯で優しく洗い、石けんは低刺激のものを使用
・洗ったあとは必ずタオルで水分を拭き取り、特に指の間は丁寧に乾燥
●爪のケア
・深爪を避け、四角く切るイメージで整える
・爪が硬いときは入浴後に切ると楽
・厚い爪や変形した爪は無理せず看護師.医師に相談
●保湿
・かかとや足の甲にクリームを塗る
・指の間は蒸れや感染予防のため避ける
・季節や皮膚の状態に合わせて保湿剤を選ぶ
●靴と靴下
・清潔な靴下を毎日交換
・締め付けが少ない靴下を選ぶ
・通気性が良くサイズが合った靴を履く
4. 訪問看護でのプロのフットケア
訪問看護では、医療的な視点から安全にフットケアを行います。
●観察
足の皮膚・爪・血流・温度・感覚をチェック。わずかな異変も記録・共有します。
●清潔保持
足浴や蒸しタオルで洗浄し、乾燥まで徹底。足浴が難しい場合は清拭で代用します。
●爪・皮膚のケア
専用の器具を使用し、厚い爪や変形爪を安全に整えます。
角質やタコは削らず、必要に応じて専門職につなげます。
●感染予防
器具は使用ごとに消毒し、滅菌ガーゼやアルコール綿を活用。
感染リスクを最小限に抑えます。
●ご家族との連携
「この爪は次回まで様子を見ましょう」
「保湿は夜に塗って靴下を履いてください」など、生活に合わせた指導を行います。
5. 季節ごとの足トラブルと予防
●夏の注意点
・汗や蒸れによる白癬(水虫)
・サンダルでの擦れや日焼け
・蚊などの虫刺され
➡ 通気性の良い靴・吸湿性のある靴下を活用。足浴や清潔保持を徹底しましょう。
●冬の注意点
・乾燥によるひび割れ
・血流障害による冷え
・厚手の靴下やストーブによる低温やけど
➡ 保湿を毎日の習慣にし、電気カーペットや湯たんぽの使いすぎに注意します。
6. 実際のケース紹介
ある利用者様は
「足の裏に小さな水ぶくれができているのに痛みを感じなかった」ため
放置してしまいました。
訪問時に看護師が気づき、
すぐに医師に報告。適切な処置により大事には至りませんでした。
このケースから学べることは、
「痛みがないから大丈夫」ではないということ。
小さな異変でも早めに共有し、対応することが重症化を防ぐ最大のポイントです。
足を守ることは生活を守ること
糖尿病フットケアは、特別なことではなく「毎日の小さな習慣」の積み重ねです。
セルフチェック、ご家族の協力、訪問看護のサポートを組み合わせることで、
足の健康を長く守ることができます。
足を守ることは転倒や感染を防ぐだけでなく、
「外に出て歩ける」
「好きな靴を履ける」
といった生活の楽しみを守ることにつながります。
ぜひ今日から「足を気にかける習慣」を取り入れてみてください。
それが未来の健康と安心につながります。


