株式会社バナナリーフ

訪問看護が支える“暮らし”の話

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訪問看護が支える“暮らし”の話

訪問看護が支える“暮らし”の話

2025/10/13

「看護師さん、ついでに電球も替えてもらえる?」
訪問のたびに、そんな一言に出会うことがある。
医療行為ではない、制度の対象外の依頼。だけど、断る理由も見つけづらい。

訪問看護の仕事は、本来“医療”を自宅に届けること。
でも、現場ではそれだけでは済まない場面に、毎日のように出くわします。

たとえば、冷蔵庫の中が空。脱ぎっぱなしの衣類。真っ暗な部屋。
「このままでいいのかな?」という思いが、心のどこかでくすぶります。

でも、なんでも引き受けることが“正解”とも言い切れません。
そんな「制度と現実のはざまで揺れる葛藤」を、訪問看護師の視点からお話しします。

看護師である前に、人として動いた瞬間


「本当は看護の仕事じゃないんだけど……」と思いながら、買い物袋を持ってあげた日。
声をかけずにはいられなかった。困っている姿を見て、動かずにいられなかった。

でも、ふと立ち止まって考える。
これは“親切”かもしれない。
でも、それが続くと、いずれ“当たり前”になってしまうのではないか?
自分がいなくなったら、この利用者様はどうなるんだろう?
そんな問いが、いつも胸の中に残る。

ある利用者様のお宅では、
週に3回訪問しているが、毎回決まって冷蔵庫に食材がほとんど入っていない。
内服薬の確認をするために冷蔵庫を開けると、調味料とインスタント食品だけ。
「食べるものは大丈夫ですか?」と声をかけると、
「昨日は食べなかった」と笑って返される。

この時点で本来であれば、地域ケア会議で共有し、
担当ケアマネジャーに相談するべき内容です。

栄養管理は看護の視点でも重要ですが、
「食事を買いに行ってあげる」ことは、訪問看護の業務範囲外です。

ただ、その境界線を現場で見極めながら対応するのは、想像以上に難しいものです。

新人看護師が直面する“線引きのむずかしさ”


訪問看護の現場では、新人看護師が制度上の“線引き”に悩む場面が多くあります。
経験が浅いうちは、
「やってあげたい」「困っているから助けたい」という思いが強くなりがちです。

ある新人スタッフは、利用者様から「洗濯物を干しておいて」と頼まれ、
つい対応してしまいました。
その後、先輩に相談したところ、
「その場で“訪問介護の担当に相談しますね”と伝えるべきだったね」と
アドバイスを受けました。

こうした判断は、経験の中で身につくものですが、
放っておくと業務の属人化や過剰な負担につながります。

そのため、ステーション全体で“判断基準”を共有し、
新人に対してはOJTやカンファレンスで繰り返し事例共有を行うことが大切です。

家族からの“期待”とどう向き合うか


もうひとつの難しさは、「ご家族からの依頼」にどう対応するかという問題です。

「前に来てた看護師さんはやってくれたのに」
「家にいる時間が少ないから、洗濯だけでもお願いできないか」
こうした言葉をかけられると、つい期待に応えたくなるのが人情ですが、
ここでも“線引き”が必要です。

家族にとっては、「看護師が来ている」という安心感が大きく、
頼れる存在であることは間違いありません。
しかしその信頼が、“何でもやってくれる存在”という誤解につながることもあります。

「私たちは医療的な支援を担っているので、生活面のご相談はケアマネジャーにご連絡ください」と丁寧に伝えること。
また、記録に経緯を残しておくことで、チーム内で情報を共有し、
トラブルを未然に防ぐことができます。

ステーション全体でルールを共有する意義


業務の線引きは、個人の判断に任せるべきではありません。

ステーション全体でルールを明文化し、
どのスタッフも共通の対応ができるようにしておく必要があります。

そのために有効なのが、「朝礼での共有」や「事例ベースのカンファレンス」。
実際に困ったケースを取り上げ、
「これはどう対応するべきだったか」
「他の職種にどうつなぐか」
などをディスカッションすることで、スタッフ全体の判断力が磨かれます。

また、「記録に残す」ことも非常に重要です。
曖昧な依頼や業務外の内容については、
いつ・誰が・どのように対応したかを記載し、必要に応じて管理者にも報告する。
これにより、トラブルが発生した際の説明責任も果たすことができます。

行政や地域資源との関係づくりの工夫


現場での“気づき”を無駄にしないためには、地域との連携体制も欠かせません。
たとえば、包括支援センターに定期的に情報提供することで、
未導入の福祉サービスにつなげてもらえるケースがあります。

また、社会福祉協議会が実施する「生活支援体制整備事業」に参加して、
地域のボランティア団体や民生委員と顔を合わせておくと、
いざというときの連絡もスムーズになります。

さらに、ステーション内に「地域連携フロー」や「相談先一覧」を作成しておくことで、
誰でもすぐに相談・連絡できる仕組みが整います。

看護師一人の対応にせず、
チームで支える仕組みづくりが、結果的に利用者様の生活を支えることにつながります。

答えのない問いに向き合い続けるということ


「これは看護か?」という問い。
制度上の線引きと、目の前の“暮らし”とのギャップに、
訪問看護師は日々向き合っています。

何でも引き受けることが正しいわけではない。
でも、何もしないという選択肢もない。

だからこそ大切なのは、“気づいたことを、気づいたままにしない”という姿勢です。
チームに共有すること。
支援につなげること。
そして、ときに境界線を伝える勇気を持つこと。

訪問看護は、「看護」だけでは完結しない仕事です。
利用者様の生活全体を見渡し、必要な支援を見極め、つなぎ、調整する。
迷いながらも、それを考え続けること自体が、
プロフェッショナルな実践なのだと思います。

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