「自分でやりたい気持ち」と「転ばせたくない家族」どう向き合う?
2026/05/15
「自分でやりたい」
「でも、転ぶ危険があるからやめてほしい」
訪問看護の現場では、こうしたやりとりが珍しくありません。
前回の記事では、
転倒後に起きる見落とされがちな変化についてお伝えしました。
その中でも多くの方が直面するのが、
「自分でやりたい気持ち」と「安全」のバランスです。
ご家族としては「また転んだらどうしよう」という不安が強くなり、
一方で利用者様は
「これくらいならできる」
「迷惑をかけたくない」と考えています。
どちらも大切な思いだからこそ、関わり方に迷ってしまう場面が生まれます。
なぜ「やりたい」と「危ない」がぶつかるのか
利用者様にとって「できること」は、生活そのものです。
歩くこと、料理をすること、外に出ること。
それらは単なる動作ではなく、
「自分らしく生きること」につながっています。
また、長年の生活習慣や役割も大きく関係しています。
元大工の方が「工具を手放したくない」、
家庭を切り盛りしてきた方が「台所に立ちたい」
と思うのはごく自然なことです。
そうした日常の延長線上に本人の意思はあります。
「まだできる」という実感は、自信や意欲を支える大切な要素です。
一方で、
ご家族や支援者は「安全に過ごしてほしい」という思いがあります。
転倒や事故は、その後の生活に大きな影響を与える可能性があるからです。
事故が起きれば本人だけでなく家族や支援者も
心理的負担や責任を負います。
このため、支援者は無意識に
「できるだけ安全な方へ」と考えやすくなります。
その結果
・本人は「やりたい」
・周りは「危ない」
というすれ違いが生まれやすくなります。
本当に危ない?状態を見極めるポイント
「危ないからやめる」と決める前に、
まずは今の状態を整理することが大切です。
本人の希望が危険かどうかは、感覚ではなく状態を見ながら判断します。
・身体機能の評価:歩行速度、バランス、握力、視力など
・環境要因の確認:段差、照明、手すりの有無など
・過去の事故歴:転倒回数、発生状況
同じ「外出」でも、環境や方法を変えるだけで安全性は大きく変わります。
ゼロか100ではなく、どうすればできるかを考える視点が大切です。
やめさせる以外の選択肢|続けるための工夫
「危ないからやめる」だけではなく、
安全に続ける方法を一緒に考えることがポイントです。
●代替手段の提案
・杖.歩行器.シルバーカーの利用
・調理時の安全グッズ(ガード付き包丁、滑り止めマット)
●環境調整
・段差解消、手すり設置
・照明の明るさ確保
・動線をシンプルにする
●進め方を工夫
・短時間から試す
・誰かと一緒に行う
・振り返りながら調整する
最初から完璧を目指す必要はありません。
「まずはやってみる」ことも大切な一歩です。
ご家族の不安と負担
利用者様の思いと同じくらい、
ご家族の不安や負担に寄り添うこともとても大切です。
特に、リハビリなどで動けるようになってくると、
「できること」が増える一方で、目が離せない場面も増えていきます。
「転ばないか心配」
「ずっと見ていないといけないのでは」
そうした緊張状態が続くと、
ご家族が疲れてしまうことも少なくありません。
ご家族だけで抱え込まないことも、とても大切です。
迷ったときはひとりで抱えない
関わり方に迷ったときは、
訪問看護やケアマネジャーなど、周りの専門職に相談してみてください。
状態の見極めや、具体的な工夫、関わり方について、
一緒に整理することができます。
また、多職種で共有することで、
より安心できる方法が見えてくることもあります。
「納得できる安全」を一緒に考える
完全にリスクをなくすことは難しいかもしれません。
しかし、工夫や関わり方によって、
安心して続けられる形をつくることはできます。
大切なのは、
・本人の思い
・ご家族の安心
・安全への配慮 この3つのバランスです。
一方的に止めるのではなく、
「どうすればできるか」を一緒に考えていくことが、
その人らしい生活を支えることにつながります。
「転ばないようにすること」と同じくらい、
「その人らしく過ごせること」も大切です。
転倒をきっかけに関わり方に迷ったときこそ、
生活を見直すタイミングかもしれません。
無理に我慢するのでも、すべて止めるのでもなく、
その方に合った“ちょうどよい形”を一緒に見つけていきましょう。
バナナの葉訪問看護ステーションでは、
千葉県の市原市・木更津市・袖ケ浦を中心に訪問を行っています。
バナナの大きな葉のように、
ご家族みなさまの不安や悩みをやさしく受け止め、
お一人おひとりの「人生」と、ご家族の思いに
そっと寄り添える存在でありたいと考えています。
「
これって相談してもいいのかな?」と思うような小さなお困りごとでも、
どうぞ遠慮なくお話しください。
病気のことだけでなく、日々の暮らしの中で感じる不安や悩みにも、
そっと寄り添える存在でありたいと願っています。
また、利用者様やご家族に寄り添うケアを一緒に届けてくださる仲間も、
随時募集しています。
訪問看護が初めての方でも、ブランクのある方でも大歓迎です。
私たちと一緒に、地域の“暮らし”を支えるチームの一員になりませんか?

